斉藤智裕「KAGEROU」を昨日ブックオフで見つけ
900円で購入して昨日読み終えた
芸名水島ヒロの話題作ということで
ポプラ社小説大賞を受賞したこともあって
100万部を超えたベストセラーとなった
色々な人の感想を見ても
なかなか絶賛する人は少なく
インターネットでも
後半部分はかなり書き換える
作業が必要という記事もあった
物語は自殺を間際で停止された
41歳のヤスオがドナーとして
彼の自殺を止めたキョウヤがそのエージェント
彼は本の中にも著述があるが
自殺するものの心境として
「生きていればいいことがありますよ
とか世間の連中は判で押したみたいに言うけど
そんなのただのきれいごとだよ!
もしそれでこの先なにひとついいことが
なかったらいったい誰が補償してくれるの?」
というくだりがある
このフレーズは本人が実際に考えたことがある
体験のフレーズなのかもしれない
この本はこのセリフが
ずっと文章を支配しているのだが
自分が提供するドナーを通じて
この考えが変わっていくことを
それを最終的にはテーマにしているようだ
小説としてはそんなに長くもなく
登場人物も少なく虚構の世界を描いている
そんな割には話もわかりやすい
ストーリー性は悪くはないが
時折入るギャグのセンスのないこと
あまり意味のないギャグが
何箇所も記されているところを見ると
これも彼のこだわりかもしれない
個人的には読み物としては悪くはないが
小説としてもまた大賞を取った
そんな作品にはちょっと思えない感じ
ストーリーのオリジナリティは
わからないでないが
言葉の使い方に個性を感じられない
斉藤氏の作品になっていない
そんな気がした
この本は私にとっては
自分で何度も読みたい
そんな小説にはなっていない
新しいスタイルの書店の買取制度で
この小説は販売されているようだが
新規購入者が一段落すると
ブックオフ等の古本屋に溢れる
そんな本になるかもしれない
ただ処女作品としては
こんなものかなという感じもあるので
次回作以降は期待できる
そんな可能性もあるとは思う
彼が書いた小説が水島ヒロではなく
斎藤智裕と認識されたとき
初めて作家の仲間入りができると思う